「精子提供を受ける旦那さんの苦悩と葛藤」精子提供という本を読んでみました。

2021-05-08

前回は過去記事ブログ「精子提供による出産・⾮配偶者間⼈⼯授精AIDの歴史」精子提供という本を読んでみました。で世界と日本での非配偶者間人工授精をお伝えしました。

精子提供を受けたいというお問い合わせをいただくときはほぼ奥様から問い合わせをいただきます。どちらかといえば旦那さんが積極的な場合は少ないです。精子提供を受ける時にとても苦悩や葛藤がともなうのが精子提供を受ける旦那さんだと言われています。この精子提供という本を読んで一番印象深いのがこの旦那さんの苦悩や葛藤です。奥さんにとっては血の繋がりのあるわが子でも旦那さんにとっては養子の子どもと同じであると書かれています。本当に子どもを愛することができるのだろうか、育てることができるのだろうか、苦悩や葛藤があるといいます。

引用:精子提供を受けた高見ご夫婦さん

「自分としては(このまま俺なんかと一緒にいていいの?)と考えてしまう。子供を作ることもできない夫では、男として負けたようなもの。俺以外の夫であれば、妻は自然に子どもを産むこともできるだろう。でも、俺といるばかりにそんな治療をしなければならないことが申し訳なく、それで本当にいいのかと・・」「もう後がないんだ。」

~停留睾丸により睾丸を摘出した高見ご夫婦・旦那さんより~

引用元:「精子提供」歌代幸子著2012-07

結婚して奥さんに子供を産ませてあげたいけれどそれができない。自分以外の男性と結婚したほうが妻は幸せになれるのではないか。現在では結婚しても子どもをあえて作らないご夫婦さんもいますが奥さんを幸せにしてあげたいという気持ちが伝わってきます。男性不妊ご夫婦さんには離婚するケースもあるといいます。

旦那さんは精子提供を受けたいのだろうか

現在は少子高齢化社会であると言われています。高度経済成長期には5~6人兄弟があたりまえでした。逆に現在は一人っ子があたりまえで、結婚しても年齢や経済的な理由で子どもをあえて作らいない夫婦も増えてきました。そうしたなか精子提供を受けて子どもを作らなくて夫婦二人の時間を大切にして過ごす生き方も良いのではないかと思います。しかし本を読み進めるとだんだんと精子提供を受ける旦那さんの気持ちが理解できてきます。

「俺にはなにもできないけれど、妻には子供を産むことが出来る。女に生まれたからには一度は体験させてやりたい。夫婦の遺伝子を片方だけでも伝えるためにはそれしかない。そうでなければ自分も子どもを育てていくうえで愛情を注ぐことはできないんじゃないかと思ったんです。」

~停留睾丸により睾丸を摘出した高見ご夫婦・旦那さんより~

引用元:「精子提供」歌代幸子著2012-07

男性に比べて女性の身体には子どもを妊娠して出産・育児するためのさまざまな機能が備わっています。女性に生まれたからには一度は子どもを産ませてあげたい。きっと他にも精子提供ではなくて養子を受け入れる選択肢もあったのかと思います。それでも妻に子どもを産ませてあげたい。妻の遺伝子を受け継いだ子どもであれば妻を愛するように子どもも愛せるのではないかという気持ちが伝わってきます。

精子提供を受けた高見ご夫婦さんのその後・・

精子提供を受ける旦那さんの苦悩・葛藤が伝わってきます。精子提供を受けて子ども授かるにはとても勇気のいる決断です。旦那さんの奥さんに子どもを産ませてあげたい気持ちと、本当に子どもを愛して育てることができるのか・・。その後、著者は子どもが生まれた2年後に再び高見ご夫婦さんを訪れています。

「息子のよだれが口に入っても、まるで気にならない。父親として今しかできないこともあるから、子どもが甘えたり、期待していることはなるべく汲み取ってあげたいと思うんです。それが親子の信頼感につながるはずだから」

~停留睾丸により睾丸を摘出した高見ご夫婦・旦那さんより~

引用元:「精子提供」歌代幸子著2012-07

旦那さん自身が精子提供を受けて子どもを持つまでとても苦悩・葛藤があったと思います。しかし、やはり実際に出産して子どもを産み育ててみないとなにもわからない。こういった言葉を聞くと精子提供者もとても安心できてうれしいです。

精子提供後のさまざまなご夫婦さんケース

今回は精子提供後とても予後の良いご夫婦さんを紹介しました。しかし良い言葉を並べるのは誰しもがすること・・。精子提供の本では精子提供後に離婚してしまったケースや、旦那さんと奥さん・子どもの関係が疎遠になるケースなどがしっかりと紹介されています。これから精子提供ボランティアを受けることを検討している方にはぜひおすすめしたい本です。

「精⼦提供~父親を知らない子どもたち~」歌代幸⼦著:https://www.amazon.co.jp/dp/4104388033/

引用や参考にした図書データ:⽇本産科婦⼈科学会1998-2009報告書・「精⼦提供・歌代幸⼦著2012-07」